ゾンビスクラムの4つの症状
4つの症状を紹介し、「外の世界との接触を望まない」という症状について詳しく説明する
この記事は、Zombie Scrum Resistanceのブログ記事「The Four Symptoms of Zombie Scrum」を日本語訳したものです。翻訳に快諾していただきありがとうございます。
訳がおかしいところがありましたら、お気軽にご連絡ください。
また、現在『Zombie Scrum Survival Guide』を誠意翻訳中です。
来年には出版される予定ですので、楽しみにお待ちください。
ステークホルダーを招待するの忘れた
ああ、そうですか
この投稿は、私たちが書いている本、『Zombie Scrum Survival Guide』から抜粋したものだ。これは、小さなインクリメントを提供し、ステークホルダーである読者のみんなを巻き込む方法である。みんなからのフィードバックや励まし、斬新なアイデアをぜひ聞かせて欲しい。
ゾンビスクラムを簡単に説明すると、スクラムに似ているが心臓の鼓動がない。それは霧の立ちこむ夜に、足を引きずりながらあなたに向かってくるゾンビのようだ。「足は2本、腕は2本、頭は1つ、よし!」遠くから見ると問題なさそうに見えるが、近くで見ると、命懸けで逃げなければならないことはすぐわかる。明らかに何かがおかしい!
ゾンビスクラムも同じだ。遠くから見ると、スクラムチームはスクラムフレームワークどおりの動きをしているように見える。スプリントプランニングはスプリント開始時、デイリースクラムは24時間ごと、スプリントレビューとスプリントレトロスペクティブはスプリント終了時に行われる。そして、完成の定義もある! スクラムガイドをチェックリストにすると、チームは「本に書いてあるとおりにスクラムをやっている」と言えるだろう。しかし、仕事の進め方をサポートするどころか、スクラムは面倒な作業のように感じられる。心臓の鼓動がなく、脳もあまり働いていない。
我が研究室での長年の調査によって、健全なスクラムは4つの重要な領域に集約されることがわかった。スクラムで成功したいのであれば、以下のことが必要だ。
- ステークホルダーが求めるものを作る
- 検査可能な結果を可能な限り早く出す
- 継続的改善
- 共通のゴールに向かって自己組織化する
ゾンビスクラムは、4つの主な症状で現れ、それぞれが1つの領域に関連している。必ずしも全ての症状が一度に現れるわけではないが、通常は一度に現れる。ここでは、そのうちの1つの症状である「外の世界との接触を望まない」に焦点を当てて説明していく。他の3つの症状については簡単に触れていくが、書籍『Zombie Scrum Survival Guide』では、より詳細な説明をしている。
症状1:外の世界との接触を望まない
この症状は、「ステークホルダーが求めるものを作る」に関連している。人間を襲って肉を貪る映画のゾンビとは違い、ゾンビスクラムの影響を受けたチームは、人から離れて自分たちが慣れ親しんだ環境に身を置くことを好む(下の図参照)。彼らはバリューチェーンの上流にあるものも下流にあるものも気にしない。ディスプレイの後ろに隠れて、設計、分析、実装に忙しくしている方が安全だと考えている。ゾンビスクラムチームは、自分たちは車輪の歯車だから実際に何かを変えることはできないと思い込んでいるか、あるいはそもそも変える気がない。残念ながら、多くの場合、この図式は当たっている。
“ゾンビスクラムチームは、自分たちは車輪の歯車だから実際に何かを変えることはできないと思い込んでいるか、あるいはそもそも変える気がない。”
彼らの仕事や、彼らの仕事が行われるシステム(組織の仕組み)も、彼らを小さな箱の中に閉じ込めるように設計されていることが多い。従来の組織では、マネージャーが管理し、デザイナーが設計し、アナリストが分析するように、開発者はコードを書くだけだ。開発者は仕事が終わると、その仕事を他の人に引き継ぎ、その仕事がどうなったのかを知らずに次の仕事に取りかかる。このような昔ながらの縦割りのサイロ思考は、他の人に頼らずに仕事をするために必要な能力を全て揃えたクロスファンクショナルチームという考え方に反している。
その結果、チームは価値の疑わしい機能を大量に次々と生み出してしまう。顧客が実際に必要とはしていないもの、または、あるとうれしいがなくても構わないものの可能性がある。おそらくプロダクト開発における最大の無駄であるたいして価値のない平凡なプロダクトを生み出している。
いなくなったかな? よし、それじゃ仕事に戻ろう
その他の3つの症状
症状2:動くプロダクトがない
ゾンビスクラムチームはスクラムの形だけなぞっているが、プロダクトは開発の最後か、何回もスプリントを重ねた後にした存在しない。ステークホルダーは開発チームが作成したものを検証する機会がほとんどない。また、このチームでは、「完成」の意味を非常に限定的に定義し、それを拡大しようとする意欲もない。
症状3:改善しようとする意欲がない
ゾンビスクラムチームは、スプリントが成功しようが失敗しようが何の反応も示さない。他のチームが毒を吐いたり喜んだりしていても、彼らはただ感情もなく諦めたような虚ろな目でじっと眺めているだけだ。チームの士気は低い。スプリントバックログアイテムは、何の疑問もなく次のスプリントに持ち越される。「なんで、持ち越しちゃ駄目なの?次のスプリントは必ずあるし、そもそも繰り返す必要あるの?」
症状4:自律性なし、オーナーシップなし
ゾンビスクラムチームは、最高のプロダクトを作るために必要な人たちと柔軟な連携ができない。自分たちでツールを選択することも、自分たちのプロダクトに関する重要な決定を下すこともできない。ほとんどすべてのことに許可を求めなければならず、その要求はよく却下される。このような自律性の欠如は、オーナーシップの欠如という非常に分かりやすい結果をもたらす。実際にプロダクトを形づくることに関われてもいない人が、プロダクトの成功を気にするだろうか?
すべては繋がっている
この4つの症状は密接に繋がっている。スプリントで動くプロダクトインクリメントがめったに出てこない場合、チームはスクラムフレームワークが提供する短いフィードバックループの恩恵を受けることができない。ユーザーや顧客からのフィードバックが不足しているということは、プロダクトやその用途に関する重要な仮説を検証するために必要な機会が失われていることを意味する。この短いフィードバックループの肝である鼓動がなければ、スプリントのタイムボックスに違和感を感じても不思議ではない。このような環境では、チームは、それぞれのスプリントを最大限に活用したいとは思わない。これでは、チームがスプリントゴールを達成できなくてもガッガリすることはない。そして、チームはこれがスクラムのあるべき姿ではないと気づいても、自分たちでは変える力がなく身動きできない環境だと感じ、変化を起こさない。
最後に
この記事では、ゾンビスクラムの4つの症状、特に「外の世界との接触を望まない」という症状をを掘り下げてきた。もし、このような症状に気付いたとしても慌てなくてよい。幸いなことに出口はある。ゾンビスクラムからの回復は自力で行わなければならないように思うかもしれない。実際私たちは多くのチームや組織がそうしているのを見てきた。
書籍『The Zombie Scrum Survival Guide』は、ゾンビスクラムの原因を理解するのを助け、さらに大事な、チームや組織の働き方を変えるために始めることができる全ての手段を見つけることができる。ゾンビスクラムと戦うための50以上の実験が期待できる!
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追記
サーバントワークス株式会社さんが、「ゾンビスクラムを解決するための10の成功要因」を訳してくれていますので、許可をいただきリンクを貼らせていただきました。これはゾンビスクラムからの回復に役立つものになります。